江戸の町人の着物を見ると、
最初に感じるのは「静けさ」だ。
藍。
鼠。
黒。
遠くから見ると、ほとんど無地に見える。
現代の感覚からすると、
少し物足りないくらいだ。
しかし、この地味さには理由があった。
江戸時代、幕府は何度も
奢侈禁止令というものを出している。
贅沢をしてはいけない。
派手な服を着てはいけない。
特に町人は
身分を超えるような豪華な服を
着ることができなかった。
つまり江戸の人たちは
「派手なおしゃれ」ができなかったのだ。
ところが、ここからが江戸らしい。
江戸の町人たちは
この制限をただ受け入れたわけではない。
むしろそこから
新しい美意識を生み出した。
表は地味に。
しかし
裏で遊ぶ。
袖の裏。
羽織の裏。
長襦袢。
外からは見えない場所に
大胆な柄を入れる。
龍。
富士山。
波。
時には粋な物語。
誰にも見えない。
でも、自分は知っている。
その感覚が
とても江戸らしい。
江戸の人たちは
制限の中で
自由なおしゃれ
を見つけた。
そしてそこから生まれたのが
「粋」という美意識だった。
